研究内容

1 運動・トレーニングによる骨格筋肥大のメカニズム

主にラットやマウスの筋力トレーニングモデル(電気刺激による筋収縮や、手術による代償性肥大)を用いて、トレーニング刺激後の遺伝子やタンパク質の発現などを調べています。このような研究により、筋力トレーニングの効果のメカニズムが解明されつつあります。
(論文番号:74: 77: 83; 90; 95 など)

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2 筋運動が脳に及ぼす効果:認知症予防を目指して

運動が高齢者の認知症予防に効果的なことが、近年の疫学研究からはっきりとしてきました。しかし、その効果のメカニズムは不明です。我々の研究室では、ラット骨格筋を直接電気刺激して収縮を起こさせたときの、脳の海馬(短期記憶中枢)での脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現などを調べています。BDNFは、神経細胞の増殖や保護に重要なはたらきすることから、運動に伴って筋から分泌されるホルモン(マイオカイン)や、筋から中枢に向かう求心性神経の活動が重要である可能性があります。

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3 ヒト身体内で筋の特性を探る新しい方法の開発と応用

骨格筋の生理学的特性についての基礎は、これまで主にカエル骨格筋単一筋線維を用いた多くの研究で築かれてきました。ヒト骨格筋の特性も、こうした基礎知識の延長として捉えられてきていますが、実際にはこれを実験的に調べる手段が少ないのが現状です。本研究室では、ヒト身体内での筋の特性を非侵襲的に測定・評価する方法の開発と応用に取り組んでいます。

  • In vivo スラックテスト法:収縮中の筋にきわめて高速度の開放を与え、生じた「たわみ」(slack)が解消されるまでの時間を測ることにより、筋が発揮しうる最大の速度(Vmax)を推定します。「トレーニングや不活動によってVmaxがどのように変わるか」などのテーマに応用可能です。
    (論文番号:41)
  • 超音波剪断波による筋の硬さ測定:フォーカスした超音波を筋組織内の1点にヒットし、筋線維の長軸方向に伝搬する剪断波の速度を測ることにより、筋線維長軸方向の硬さを算出できます。これにより、身体内で筋線維が発揮している収縮張力を推定することができました。この手法は今後さまざまなテーマに応用可能です。
    (論文番号:100)

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4 新しいトレーニング法の開発と応用

筋力トレーニングの効果のメカニズムなどから得られた知見をもとに、ヒトの筋力トレーニングに応用可能な新しいトレーニング方法を考案し、それらの基礎研究の応用研究を進めています。

  • 筋血流制限下でのトレーニング:筋の付け根をベルトで圧迫し、筋血流を制限した状態でトレーニングすると、最大筋力の20%という低負荷強度でも筋が肥大し筋力が増強することがわかりました。
    (論文番号:23; 24; 40; 57; 84 など)
  • さまざまな酸素環境下でのトレーニング:酸素環境シミュレータを用い、低酸素環境、高酸素環境下でのトレーニング効果とそのメカニズムを研究しています。(新領域創成科学研究科)
  • 筋発揮張力維持スロー法(スロートレーニング):筋の発揮する張力を維持し、ゆっくりとした動作でトレーニングすると、筋収縮そのものによって筋血流の制限がおこり、最大筋力の30%程度という低負荷強度でも筋が肥大し筋力が増強することがわかりました。このとき、筋タンパク質の合成が高まることも、カナダの研究グループ(ヒト)と本研究グループ(動物)によって確かめられました。この方法は安全性も高く、とりくみやすいため、高齢者の介護予防、虚弱者の筋力強化、リハビリテーション、生活習慣病の運動療法などを目指した応用研究を進めています。
    (論文番号:45; 83; 92; 99 など)

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5 筋機能の個人差:遺伝子多型がトレーニング効果に及ぼす影響

遺伝子の一塩基置換多型(SNPs)が筋の特性や、トレーニング効果の現れやすさなどに及ぼす影響について調べています。これまでのところ、ACTN3という遺伝子の多型が、高強度運動時の筋の「傷つきやすさ」に関連しているという結果を得ています。また、「網羅的SNPs解析」という新しい手法を用いて、「筋肉のつきやすさ」についての個人差を調べるプロジェクトもスタートしています。将来的には「テーラーメイドトレーニング」へとつなげることを目指しています。

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6 新たなセンサ技術などを応用した身体運動の分析とその応用

小型でウエアラブルな圧力センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、筋電計などを用いて、身体運動の巧みさや効率を、実験室内でなくフィールドで評価するシステムの構築に取り組んでいます。主に柏の新領域創成科学研究科にある研究室で研究を進めており、現在のテーマは以下の通りです:

・足部障害を起こさないためのハイヒール着用時の姿勢制御および歩行制御(女性)
・フィールドでの走行動作の分析方法の確立
・高齢者の歩行動作の分析
・高齢者の転倒危険性を評価できる新しいシステムの開発(論文番号:和文2)
・複合関節動作ダイナモメーターの開発と応用(論文番号:50; 69; 70; 72 など)

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■研究成果の社会への還元

(1)スロートレーニングを利用した介護予防・筋力づくりプログラムの開発



(2)新しい測定原理を用いた筋機能評価機の開発と応用

A.サーボ制御式膝・股関節伸展ダイナモメーター/(株)松下電工と共同研究

B.等速性膝・股関節伸展ダイナモメーター/(株)メディモワールドと共同開発


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